「麻桶の毛」桶に入っている毛が正体?なぜ妖怪の仲間なのか

麻桶の毛、という妖怪をご存知でしょうか?加茂村の彌都比売神社(やつひめ)神社の神体の麻桶に入れられた毛がその正体。神社に奉られている神の怒りに触れたとき、その毛が長く伸び、麻桶から出てきて人を襲うのです!

「神体」って何?どんなものがある?

ところで、神体(しんたい)とは何を指すのでしょうか?

神体とは、神道で神が宿るとされる物体で、礼拝の対象となるものです。
神道においては、巨石や樹木、山や森などの森羅万象が神体であり、御霊代・依り代として存在します。神社に祀られているものが神体と言われるものなんですね。もちろん麻桶の毛も神体になります。神体の中には長期に渡り受け継がれる物、定期的に更新される物など保存期間が一貫している物とそうでない物に分かれる場合があります。

神体が妖怪に化ける伝説もけっこうあるようで、この麻桶の毛も神の化身として妖怪になってしまった例だと言えます。

水木しげるさんの「麻桶毛(まゆげ)」

妖怪漫画家・水木しげるさんの著書では「麻桶毛(まゆげ)」と、麻桶の毛をもじった名称で表記されており、大きな毛の塊のような姿で人を襲う絵が描かれています。
妖怪辞典やゲゲゲの鬼太郎では「麻桶毛(まゆげ)」として紹介されているので見たことのある方も多いかもしれません。

2019年に放映していたアニメ「ゲゲゲの鬼太郎」第六期のエピソードの一つ、「呪いのひな祭り 麻桶毛」では、ねずみ男が神社に忍びこみ、お供え物を食べたり金目のものを奪おうとしてお札を剥がしてしまい、妖怪麻桶毛の髪の毛に襲われるシーンがありました。

このエピソードでは、もとはある神社のご神体で一筋の毛である麻桶毛だが、人形の髪の毛に隠れて永遠に生き続け、生きるものを襲い、その養分を吸い取る。そして吸い取られたものは人形に変えられてしまう、という設定になっていました。

毛長神社に伝わる類話

埼玉県草加市新里町の毛長神社では、6メートルもの長さの髪を持っていたある女性が人々の幸せを祈りながら入水し、その髪が毛長神社の神体になったと伝えられています。この毛は当初、箱に納められて神体として祀られていたものの、ある時に不浄の物と見なされて、大水の際に流されてしまったそうです。なんだか悲しいお話ですね。

また別の説によると、この毛長神社の毛は素戔嗚尊の妹姫の髪とも、新里のある女性が失恋から毛長川に身を投げた後、川から見つかった長い髪だとも言われます。

このように、女性の体毛が神体として祀られる例は全国にたくさんあります。

群馬県多野郡上野村大字新羽では、神流川を流れていた栗野権現または橋姫の陰毛が神体とされています。どうやら女性の体毛には、念や呪い、祈りなどがこもりやすいようですね。

まとめ

「麻桶の毛」(麻桶毛)は、もともとは麻桶に入れられた一本の毛だったものが妖怪として伝えられるようになり、さらに水木しげる先生の手によって大きな毛の塊の妖怪として表現されるようになったものだったのです。

また、「麻桶の毛」(麻桶毛)は、人を襲う恐ろしい妖怪ではありますが、悪さをする人間を神がこらしめるための妖怪でもあります。毛に捕らえられたと伝えられている盗人たちや勝手にお札を剥がしたねずみ男のようにひどい目に遭っちゃいますから、絶対に神社で悪さをしてはいけませんよ!

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