妖怪「火車」の正体は猫?火葬場に現れて亡骸を奪うのはなぜ?

「今月は火の車だよー!」お金がなくて大変な時を表す時に引用される「火の車」ですが、妖怪「火車」もいるのです。いったいどのような妖怪なのでしょうか?

妖怪「火車」とは

火車(かしゃ)は、葬式や墓場、火葬場から、悪行ばかり行なって邪な心を宿したまま死んだ人間の亡骸を奪うとされています。伝承地は特に特定されませんが、全国に事例があります。

また、火車は化け猫の妖怪だと言われています。年老いた猫が火車に変化するとも言われており、猫又が正体という説もあります。

妖怪「火車」の伝説

「火車」は、昔話「猫檀家」や多くの説話集の中に伝説が残されています。

『奇異雑談集』では、越後国上田で行なわれた葬儀で、葬送の列が火車に襲われ、亡骸が奪われそうになった話が収録されています。トラの皮の褌をし、雷を起こす太鼓を持った雷神のような姿で激しい雷雨とともに現れたといわれます。

『新著聞集』ではいくつかの説話があります。

武州の妙願寺村でのこと。酒屋の安兵衛という男が急に道へ出てきて「火車が来る」と叫んで倒れました。彼はそのまま寝込んでしまい、後に下半身が腐って死んでしまったということです。

また、松平五左衛門という武士が従兄弟の葬式に参列していると、雷鳴が轟き、空を覆う黒雲の中から火車がその亡骸を奪おうとしてきました。奪おうとする腕を刀で切り落としてよく見たところ、3本の爪があり銀の針のような毛に覆われていたということです。

他の説話では、肥前藩主が備前の浦辺を通っていると、遠くから黒雲が現れて悲鳴が響きわたり、人の足が突き出てきたそうです。皆がその足を引きおろすと、それは老婆の死体でした。付近の人々曰く、この老婆はひどいケチでみんなから嫌われていましたが、ある時、便所へ行くといって外へ出たところ、突然黒雲が現われて連れ去られてしまったのだということです。

また『茅窓漫録』によると、葬儀中に突然、風雨が起きて棺が吹き飛ばされ、亡骸が失われることがたびたびあることから、これは地獄から火車が迎えに来たものであると人々が信じていたということです。火車は亡骸を引き裂いて、山中の岩や木に置いたままにしていくこともあったそうです。

『北越雪譜』には次のような説話が収録されています。

越後国魚沼郡での葬儀において、突然の風とともに二又の尾を持つ巨大猫がいる火の玉が飛んできて棺にかぶさり、亡骸を奪おうとしました。しかし雲洞庵の和尚・北高によって撃退され、その撃退に使われた北高の袈裟は「火車落の袈裟」として後に伝えられたということです。

なぜ亡骸を奪うの?

『宇治拾遺物語』では、地獄で亡者を責める鬼が、燃え盛る火の車を引き、罪人の亡骸、もしくは生きている罪人を奪い去ることが語られています。

また、民衆に僧侶がわかりやすく伝えた法話『地獄縁起』でも「生前に重い罪を犯した亡者が地獄へ送られる際に押し込められる火炎の車」と火車の説明がされているように、悪いことをしたら死んでもロクな目に遭わないので正しいことをしましょう、という象徴になっていたようですね。

つまり、火車が亡骸を奪うのは、罪人を地獄に連れて行くためだったのです。

古来、猫は魔性の持ち主とされ、「猫を死人に近づけてはならない」「棺桶の上を猫が飛び越えると、棺桶の中の亡骸が起き上がる」といった伝承があるので、猫と死人に関する伝承、罪人を奪う火の車の伝承が組み合わさって火車が生まれたということです。

妖怪「火車」に似た妖怪

ポピュラーな妖怪である「河童」が人間を溺れさせて尻から内臓を食べる、という言い伝えは、この火車からの影響によって生じたものとする説もあります。

また、中国には「魍魎」という妖怪の伝承がありますが、これは死体の肝を好んで食べるといわれることから、日本では死体を奪う火車と混同されたと見られています。

まとめ

悪いことをしていると火車によって地獄に連れていかれるかもしれません・・・!でも、ネコ好きなら、炎に包まれた化け猫の妖怪をちょっぴり見てみたい気もしますね。

また、経済状態がひっ迫して危ない状態である「火の車」という言葉は、亡者が地獄で責め苦を受けることに由来しているらしいですよ。妖怪「火車」も「火の車」もどちらにしても恐ろしいです・・・。

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